偏光フィルタのおはなし
こんにちは
いつもテシコン製品をご愛顧頂きありがとうございます。
メールマガジン第4号をお届けします。
今月もまだまだ暑いですね~ テシコンでは再校正の作業時の室温(カラータイル)が22.5℃と決められているので、再校正の作業室はキンキンに冷えています。1日に数台の作業を行うと寒くて外へ出たくなります。
ところで、9月20日発行の印刷雑誌10月号はG7特集で、テシコンの三好も出稿しておりますのでゼヒゼヒご購入下さい!
今回の内容
偏光フィルタについて
今回のテーマは偏光フィルタなのですが、その前に濃度を測定するしくみをおさらいしましょう。
濃度計や分光光度計のしくみ
下の写真は昔の濃度計の光学系です。
横から見ていますが、光源ランプが発光して「偏光フィルタ」を通過して、測定部でインキ層に光を当てます。インキ層から反射した光が「偏光フィルタ」を通過して受光部に達します。
偏光フィルタについて
偏光フィルタの役割は直行する光だけを通して、拡散光は通しません。油性印刷時で考えると、デリバリから出てきた時はインキはまだ濡れていますのでインキ面が平滑で、0°や45°の光をインキ層へ当てても乱反射(拡散光)が少ないので、偏光フィルタは有っても無くても濃度値は変わりません。
しかし、インキが乾燥すると
・インキ乾燥後(偏光フィルタ無)
インキ層の表面が平滑では無くなり、光源からの光を表面で拡散してしまい、インキ層を通過していない光(必要の無い)も受光してしまうので濃度値が低くなります。
・インキ乾燥後(偏光フィルタ有)
偏光フィルタは直行する光だけを通しますので、受光部にはインキ層を通過した光だけを受光します。偏光フィルタがあると乾燥後もほぼウェット時と同じ濃度値が期待できます。
現在の分光光度計がベースの濃度測定では偏光フィルタの有無をご自身で設定変更が可能です。
例えば油性機とUV機が混在する工場で、同じ濃度値を目標にしたいとなると、偏光フィルタは有った方が良いかもしれません。
ご注意
偏光フィルタは濃度値の測定時のみ使用の有無を選択できますが、色彩値(CIE L*a*b*)の測定の時は必ずオフ(無し)に設定して下さい。
テシコンのスペクトロデンスでは偏光フィルタの設定で「オート」を選択できます。これは、濃度に関する測定ファンクションを選択すると偏光フィルタを自動で「オン(有り)」にし、色彩に関するファンクションを選択すると自動で「オフ(無し)」に設定してくれる機能です。
ここを「オート」では無く「オフ(無し)」にしておくと、濃度も色彩も「オフ(無し)」になります。
よく、ドライダウンという言葉を耳にしますが、偏光フィルタが入っていないため、乾燥すると濃度が下がる事をドライダウンと呼ぶことは多分ありません。本来のドライダウンはインキが乾燥した状態の方が光沢が下がり、紙の上のインキの顔料等が浮き出たようになるため色の見え方が変化する事だと考えます。
ここでよく頂く質問です。
Q)ジャパンカラーのドットゲイン測定時の偏光フィルタの設定は?
ジャパンカラーの標準印刷認証の認証基準に「Status T(偏光フィルタなし)」と記載されていますので、普段「偏光フィルタ有り」運用されている方はジャパンカラーのドットゲイン測定時だけ「無し」にして下さい。
ちなみにISO 12647-2(PSO)では「Status E 偏光フィルタは有っても無くても同様の結果が得られる」と書かれています。ジャパンカラーは少しアメリカンな匂いがしていますね(笑)
※左がジャパンカラーの設定「ISO T/noPOL/ABS」、右がISOで「ISO E/noPOL or POL/PAP」
ISO TとISO Eはステータス(濃度フィルタ)
noPOLは偏光フィルタ無し、POLは偏光フィルタ有り
ABSは絶対白色、PAPは用紙ゼロ(相対)
前回のメルマガでマレーデービスの網%に触れましたが補足があります。上記のジャパンカラーのように白色基準がABS(絶対)になっていても、網%を測定する時(マレーデービス)は用紙ゼロの濃度値で計算しますので、スペクトロデンスはABSになっていてもキャリブレーション時は用紙と白色板の両方を測定しています。
いかがでしたでしょうか?
偏光フィルタの設定は昔の濃度計では購入後に変更できなかったので、初めて導入した濃度計がアメリカ製だと無し、ヨーロッパ製だと有りと決まってしまったので、現在もそのまま同じ仕様で使われているケースが多いと思います。分光光度計では選択が可能ですので自社の事情に合わせて変更してお使い頂けます。
最後までお付き合いありがとうございました。
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